光機能化の概要

光機能化とは

「光機能化」とは、インプラント治療における最先端技術で、インプラントが骨と接着する性能を飛躍的に高める画期的な技術です。 asagaya.futsalplus.com

 

インプラント治療には転機が訪れたと言われています。それは、インプラントに光をあてることによって、その表面を活性化させる技術によるもので、この技術は「光機能化」と呼ばれています。この技術は米国UCLAで発明され、その後、実用化に向けて、日米で共同開発されました。光機能化バイオマテリアル研究会(http://hikarikinou.officialwebsite.jp/)によると、現在までに、国内で約200施設(2012年8月現在)の歯科医院や大学病院に導入され、10,000本以上のインプラントに使用され、非常にいい成績をおさめています。

 

インプラント医療の課題や限界に取り組む

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図のように、インプラントの性能は、1990年半ばに大きな進歩を遂げました。インプラント治療が成功するためには、あごの骨の中に埋め込まれたインプラントが骨と強く接着することが必要なのですが、その能力がそれ以前のもと比べて、約3倍に上がったのです。それ以前は、平坦であったインプラント表面が、ミクロレベルの粗い面になったからで、これらはミクロ粗面インプラントといいます。この粗面インプラントはインプラント医療を向上させ、今日のインプラント医療の普及に貢献しました。shin.nu

 

しかし、この粗面インプラント以降、めざましい進歩はなく、インプラント医療は壁にあたりました。そのため、成功率は頭打ちし、あごの骨の質や量の問題でインプラントができないことも多く、また、最終的に歯が入るまでどうしても長い時間、待たなければならないなどの課題が克服できずにいました。このような医療背景の中で発見されたのが光機能化で、これまでの粗面インプラントの性能をさらに3倍にまで向上させることが可能になりました。 図をみても、大きなブレイクスルーが訪れたことが理解できます。

 

光機能化の効果とは

ではインプラントを光機能化するとどのような効果があるのでしょうか。繰り返しになりますが、インプラント治療が成功するためには、土台となるインプラントが、あごの骨と強固に接着することが必要です。その過程は、図に示すように骨を造る細胞(青色)がインプラント表面に付着して、そこに骨(白色)を造ることによって達成され、それを骨結合と呼びます。光機能化の効果を一言でいうと、骨に埋入する前に、インプラントを最適な光でコンディショニングすることにより、その表面を、骨を造りやすい最高の状態にするということです。一目でわかるのは、下の図で、光機能化したチタン表面は、水が著しく広がる状態になっているということです。一方、光機能化を施していないインプラントは、水をはじいて、水はまったく広がらない状態となっていることがわかります。 両者ともに、10ミクロリットルのわずかな水滴をインプラントの上に置いたときの写真です。  

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その正体は、インプラントの老化だった

実は、インプラント表面が水を弾いて骨ができにくくなっているのには、理由があったのです。下の図を見てください。本来、作ったばかりの新鮮なインプラント面は、水がよく広がる特性をもっているのですが、時間経過とともにその特性は失われ、ほぼすべての場合、患者に使用される時点では、インプラントは水を弾く状態へと劣化してしまっていたのです。これを、インプラントの生物学的老化といい、この現象も最近発見されました。そして、このままでは、インプラントを骨に埋め込んだ時、本来の能力が発揮できていないのはないか、そして、インプラントごとの性能の均一性も改善の必要があるのではないか、という懸念が生まれたのです。先に説明したように、光機能化を行うと、いったん失われた水の広がりを回復することができ、骨との接着力もかえって、新しいインプラント面よりも優れることが実証されています。

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光機能化に期待されるメリット

光機能化から期待される治療のメリットとは 科学で実証された高い性能とこれまでの臨床データから、光機能化インプラントには様々な臨床効果が示されています。まずは、失敗率が低いことです。簡単な症例でさえ、これまでのインプラントでは、世界平均で8-9%程度(Bryant et al., 2007; Klokkevold and Han, 2007; Melo et al., 2006;世界インプラント学会のコンセンサス)が失敗していました。充分な骨との接着が得られずに、インプラントが脱落するものです。それと比較して、光機能化したインプラントの失敗率は0.3%でとても低い結果となっています(小川隆広編, 2012)。一方、比較的難しい症例では、これまでの失敗率は、多くの論文で10-15%以上とされていますが(Aghaloo and Moy, 2007; Bryant et al., 2007; Klokkevold and Han, 2007)、光機能化インプラントの失敗率は、難しい症例を3分の1以上含み、即座に歯を造るという難しい手法を多く取り入れた群でさえ、失敗率は1.4%と低くなっています(小川隆広編, 2012)。また、患者さんが歯を入れることができるまでの期間を半分と短くした場合でも、高い成功率が維持されることがわかりました(小川隆広、船登彰芳, 2011;小川隆広、船登彰芳, 2012;小川隆広編, 2012)。これらのデータは、同じ患者群に対して、光機能化の効果を並行して比べたものではなく、また何年後まで経過を追ったものか、データ採取時期も異なるものですが、充分参考になるデータと考えています。さらに、インプラントが骨の中で安定していくスピードを計ったデータでは、光機能化を用いると、骨の種類によっては、3-30倍ほど早いスピードで骨と接着することもわかりました(小川隆広, 船登彰芳, 山田将博, 他, 2012)。また、インプラント治療は、なるべく外科的侵襲を少なくすることが求められていますが、光機能化で骨との接着力が上がるため、これまでより短いインプラントを使うことで、骨へのダメージを少なくしようとする試みなども始まっています。これらのメリットをまとめると、光機能化は、インプラント治療の安心と安全のレベルを大きく向上することにつながる技術と言えるでしょう。


インプラントの生物学的老化と光機能化についてまとめたリーフレットを、「リーフレットダウンロード」のページで、ダウンロードできます。ここをクリックください。


また、光機能化の詳細については、「光機能化に関する報道」のページでも紹介されていますし、ウィキペディア百科事典にも掲載されています。